「略奪愛」は不倫の恋なので、常に後ろめたさが拭えない。
世間も認めないだろうし、周りの人間も一言「止めとけ」と言うだろう。
日本には古来より忍ぶ恋というものがあるが、「略奪愛」はまさに忍ぶ恋。
他人には言えない愛のカタチなのだ。
だから、通常は相手の男がいる目の前でその女性に愛を語ったり、あからさまに横取りしようとしたりすることはない。
少なくとも僕にはそんな勇気はないし、度胸もないので、例え奪うにしてもその男にはバレないように上手くやろうと考えるだろう。
GWが明け、5月中旬ぐらいになるとコブシメの産卵が最盛期に入る。
この頃になると産卵場所のウスサザナミサンゴ上では、人目もはばからず、あちらこちらで「略奪愛」を成し遂げようと、白昼堂々とオス同士が喧嘩を行っているのが見られる。
しかも、メスは旦那の子を宿し、その卵を産んでいる真っ最中にも関わらず、もう1匹のオスは横から堂々と求愛し、奪おうと試みる。
当然、旦那は怒って、そいつの排除に懸命なのだが、これに一生懸命になってしまうと、今度はまた別のオスが嫁さんにちょっかいを出してくるから気が抜けない。
互いの嫁さんが卵を産んでいるのを見守っていたオス同士がただ接近しちゃっただけで、喧嘩が始まる始末なのだ。
だから産卵中はかなりピリピリした状態が続く。
コブシメの「略奪愛」は忍ぶ恋などという静かなものではない。
それはもう戦争なのだ。
潜ファンダイビング
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