生き物の体の模様には様々なパターンが見られるが、これを真面目に考え、生き物の模様形成に統一的なメカニズムがあることを提唱した学者さんがいる。
「チューリング・パターン」と呼ばれるその概念は、1952年にイギリスの代表的な数学者でコンピュータ科学の生みの親でもあるアラン・チューリングによって提唱された。
生き物の体の模様には濃淡があって、これが縞模様や斑点模様を作っているわけだが、この濃い部分と淡い部分はお互い助け合って共存しているため、どちらが欠けてももう一方の存在が危うくなるそうだ。
結局、濃淡のお互いの細胞が共存しながら増殖していくと、最後は熱帯魚のような縞模様に落ち着き安定する。
これが「チューリング・パターン」の概念で、実際、コンピュータを使ったシュミレーションではこの模様形成の過程がチューリングの導いた微分方程式によって簡単に再現できる。
美しい模様の裏には、細胞同士の駆け引きがあったのだ。
アラン・チューリングはゲイだったらしいのだが、当時イギリスではゲイが精神病であると考えられていたため、薬物療法を受けさせられ、精神的に不安定になって1954年に自殺したそうだ。
その死の直前にこの「チューリング・パターン」を提唱したのだが、当時は数学的に証明しただけで、物的証拠がないという事で全く評価されなかったようだ。
ところが1995年になって、日本の近藤滋という研究者がタテジマキンチャクダイの縞模様が成長と共に変化し、その変化の様子が「チューリング・パターン」で予想されるメカニズムとまさに一緒であることを発見した。
この研究成果はタテジマキンチャクダイの写真と共に権威ある科学雑誌「Nature」の表紙でも紹介された事からも、その反響の大きさが分かる。
23年の時を経て、チューリングの概念が現実の生態系の中でようやく証明されたのだ。
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